2020年代に入り、年1枚、コンスタントにニュー・アルバムをリリースしているジャンクフジヤマ。通算12枚目、メジャー復帰しての2作目『憧憬都市 City Pop Covers』は、サブ・タイトル通りのカヴァー・コレクションである。そのフォーマットといい、いま注目のイラストレーター:Jのアートワークといい、まさに今のハヤリのシティポップ・ブームに乗った感。でもその奥に込められた彼の真意を探るべく、前作『DREAMIN’』に続いてインタビューを行なうことになった。
- 何故にこのタイミングでカヴァー・アルバムを?
- 最初のアルバムからちょうど15年目なんです。そこで節目というか、ちょっと記念碑的なものを、と考えた時に、カヴァー集の企画が持ち上がってきて、“イイネ、やりましょう!”と。
- でもライヴでは、以前からカヴァー曲をたくさん演ってきてますよね? 『DREAMIN’』でも<君は薔薇より美しい>(布施明)を歌っていたし。
- そうですね。でもライヴで演った曲をレコーディングするのではなく、アルバムで取り上げて新しいチャレンジになる曲の並びを考えたのです。中には学生時代に歌っていた楽曲もありますが、それもまた新しい挑戦になるように、って。ホント、曲選びに一番時間を掛けました。
- ここしばらく配信シングルで、山下達郎さんの曲を連続してカヴァーしていたじゃないですか。<SPARKLE> <RIDE ON TIME> <DOWN TOWN> <LOVELAND,ISLAND> <高気圧ガール>。そこからアナログ・シングルも2枚出て。同じカヴァーでも取り上げる意味合いにどんな違いがあったのですか?
- 10代前半から20代始めに掛けての頃は、ホントに達郎さんを聴きまくっていて、それこそ他の音楽は聴かない、達郎さんしか聴かない、みたいな時期がありました。でも僕の年代だと、そこまで達郎さんだけをディープに追い掛けた人って、なかなかいないと思うんですよ。そういう自負もあるので、今の若いミュージシャンがシティポップの流れで達郎さんの楽曲を歌うのとは、意味が違うと思うんですね。目指しているステージが違うというか。だからポンタさん(名ドラマーの村上秀一/21年3月没)みたいな大御所が僕のやっているコトに反応して、かわいがってくれたと思うんです。似たようなシティポップ・カヴァー集に見えても、そこの線引きはシッカリ打ち出したかったし、そのように作ることができたかなと思っています。
- そこをもっと具体的に言うと? もともとヴォーカル・パフォーマンスには何ら心配ないけれど。
- 曲の核の部分をどう捉えて表現するか、ですね。シティポップはオシャレかもしれない。でもそれが根ざしている部分は、結構泥臭いモノだと僕は思うんです。それをシッカリ捉えつつ、サウンドでどう軽やかに表現していくか。繊細さだったり、都市の煌めきだったり、レジャー感覚に乗せて、とかね。そういう切磋琢磨の結晶がシティポップではないか、と。海が見える、摩天楼が見える、確かに表面的にはそうであっても、実は地べたを這いつくばって音楽を創っている。聴いてくれた人にそこまで伝わるモノにしたかった。
- 達郎さんがあれだけシャレたコトを演っているのに、自分の音楽はロックン・ロールだと言うのと同じだよね。
- そうです。白鳥は優雅に泳いでいるように見えるけど、水の中では必死こいて足を掻いる。そんなに簡単じゃないよ、ってコトですね。
曲選びに一番苦労したと言うだけあって、セレクトには多方面から意見を募った。インディー・デビューからジャンクを見続け、彼の嗜好をそれなりに理解している筆者も、スタッフから候補曲を出すよう求められ、いくつかが採用されている。
- 選んで戴いたリストを見て、即“コレ演りましょう”と言ったのが<真昼>なんです。結果的にでき上がったアルバムには、自分の思い入れのある曲ばかりを収録することができましたが、僕の中でのキラー・チューンはコレだと思っています。知名度は低いかもしれませんが、思い入れが深いんですね。
- 自分もシティポップ系のカヴァー・アルバムを作るなら、benzoは絶対歌って欲しいと思ったの。彼らもシュガー・ベイブのフォロワーとして登場したし、ジャンクも達郎さんカヴァーはたくさん演ってきた。ならばコレだろ!って。そうしたら、実際にデビュー前に歌っていたと聞いてビックリ。でも自分の狙いは当たっていたんだ、と。
- そうなんですよ。僕が大学卒業間際の頃だったかな? 平泉光司(benzoのシンガー)さんと会う機会があって、benzoの次のバンドであるCouchと、その時僕が組んでいたバンドの音源を交換しあったことがあるんです。だから今になってbenzoのカヴァーをアルバムに入れて世に出す、ということになって自分でも驚きました。とても感慨深いモノがあって。当時のバンド・メンバー、羊毛とおはなの羊毛クン (g) や、大橋トリオとかでプレイしてる神谷洵平 (ds) とか、みんな驚くだろうなぁ〜。“お前、今になってナニ演ってんの!?”とかって。
レコーディングは収録が決まった楽曲から先行して、どんどん録り始めたとか。当初は女性の曲、いわゆる女ウタだけに絞り込む可能性もあったらしい。
- …というのは、男性のシティポップを僕が歌うと、どうしても濃くなってしまうので(苦笑)、セレクトの幅が狭まってしまうかもしれない、という危惧がありまして…。でも女性の曲なら逆にゾーンが広がって選びやすい。そうなると気持ちが女性方面に傾いて(笑)、女性アイドル物を男っぽく歌ってみようか、なんてアイディアが浮かんでくる。そこへ<真昼>がポンと入ってきて、“これ演ろう!”となった時に、アルバムの景色がガラッと変わったんです。<流星都市>もそのあと出てきた。そして最後の最後に自分が選んだのが<夢の途中>でした。
- それはトータル・バランスを考えてのこと?
- もちろんそれもありますし、もう1曲、有名曲が欲しいと思いました。そもそも僕は歌謡曲が大好きで、そこから音楽好きになった。<夢の途中>は歌謡曲的なメロディを持っていますが、洋楽的なアレンジ、決まったフレーズや何か楽器が加わることによって、あら不思議、シティポップ的な響きになる。そういう楽曲だと思うんです。G.S.の曲とか、まさにそうじゃないですか。僕はそういうのが好きなんです。
- そういえば、<ふたりの夏物語>や<夏の終りのハーモニー>といった他の男性ヴォーカル曲も、そういうタイプだね。対して女性の楽曲は、ストレートにシティポップを選んでいる。
- 偶然といえば偶然ですけど、アルバム全体のバランスを考えていったら、結果的にそうなったんです。男性のシティポップは、僕が歌っても原曲イメージと大きく変わらない感じがして、大して面白くなりそうもない。それでは取り上げる意味がないのでね。
- 男性曲と女性曲、それぞれ選ぶ観点というか、どうして選ぶかという理由が違いますよね?
- そうなんです。洋楽だと歌詞を変えてしまって、heをshe、sheをheにして歌う方法もあります。けれど日本では演歌みたいに、男が女歌を歌って人気を得ることが多いでしょ。日本の古き良き大衆音楽文化、みたいな。ああいうスタイルも好きだし、ここへ持ってくるのもアリだと思っていました。
- 女歌を歌う難しさ、工夫ってありました?
- キーは自分に合わせましたけど、ブレスの感覚とか、言葉の解釈はちょっと悩んだかな。<黄昏のBAY CITY>に出てくる“風が凍るわ”の“わ〜”の所をどう歌うか、とか。女性らしい美しい歌い回しを意識しつつ、男の力強さも少しだけ忍ばせて。そこは子供の頃からの歌謡曲好きが、ちょっと役立ったかもしれません(笑) あとはスタッフからリクエストされた<真夜中のドア〜stay with me>。今や最もポピュラーなシティポップですから。一人で歌っているのと、bikiちゃんとのデュエットの2ヴァージョン入れました。
bikiは、4作連続でコラボレイトを続けている若手シンガー・ソングライター/サウンド・クリエイター:神谷樹が新たに結成したisland etc.のVocal/kyd奏者。直近ではバンドごと、ジャンクのライヴ・サポートを務めている。新人らしいフレッシュさがイイ感じ。
- 制作的には、ここ何作かと同様、神谷樹クンのアレンジで、基本的に2人で仕上げていくパターンかな?
- ハイ。ある程度は彼に任せつつ、僕もちょこちょこ口を出して、アイディアを挟んでいくというね。例えば<WINDY SUMMER>は、原曲と同じようにホーンをバリバリに入れてしまうと、角松(敏生)さんのアレンジそのままになってしまうので、ツイン・ギターでホーンのフレーズを追っかけて、今はあまり演らないフュージョンっぽい仕上がりにしたり。樹クンは世代的にフュージョンなんてロクに通ってないですから、そういう引き出しは多い方が良いんです。それに今はシティポップの流行を経ているので、フュージョンも以前みたいに古臭くならない。僕の世代の多くは、フュージョンもシティポップも素通りで、自分だけが孤軍奮闘していた感じがありましたけど、それがようやく認知されるようになりました。ホント、そこはありがたいというか、演りやすくなりましたね。<夏の終りのハーモニー>のアカペラも、僕のアイディア。
- もともと井上陽水ファンでもあったよね?
- そうです。それにバラード・シンガーとしての玉置(浩二)さんも素晴らしいと思っているので、何か選びたいなぁ、と考えていたら、このリクエストが頂けたので、ちょうどイイと。そうそう、この曲って、指パッチンもナマで録っているんです。最初は打ち込みを使っていたんですけど、何だか薄っぺらいので、“オレたちで録っちゃおうゼ”と言って。ずっと続けなきゃイケないので、指はかなり痛かったですけど(苦笑)。でも左右の指の微妙なズレとか鳴り方の違いって、コンピューターでは出せないんです。
- そのコダワリは大事ですよね。基本的には打ち込みでも、ここぞという時はナマ。もしそこをクオンタイズで揃えてしまったら、全然ツマラなくなってしまう。
- そうそう。そういう所も聴いて欲しいですよね。今回も収録曲によっては樹クンのバンド・メンバーに手伝ってもらったり、FIRE HORNSやサックスの坂田明奈ちゃんに入ってもらっています。あと今回はカヴァー集ということもあり、コーラスを多めに入れました。樹クンの声はハイパートが強いので、僕は太めの声で低いパートを担当することが多かった。字ハモもたくさんあったしね。そこは自分的に面白い部分でした。
制作面の比重としては、やはり曲選びが最大のポイント。どんな曲を選ぶのか。そして選んだ曲同士のバランス感、アルバムの中でのポジショニング。それをどういうアレンジで聴かせるか。そこに腐心したと言う。
- カヴァー・アルバムだからといって単なるヒット曲集になってしまえば、何の意味もなくなってしまいます。よしんばヒット曲集になったとしても、そこに自分らしさ、オリジナリティを入れていかなきゃならない。だから今度はそこで苦労する。リスナーみんなが知っている曲ですからね。だからと言って個性を出しやすい曲ばかりを選んでしまうと、マニアックな方向へ行ってしまう。少人数ライヴの時では、敢えてその手の曲を取り上げたりしますけど、今回は作品で商品になりますし、その辺りでいろいろ葛藤がありました。
- でもヒットはしていなくても、比較的知られているレパートリーが多い印象だけど…?
- そうですねぇ。でも今だから、という面もある。<テレフォン・ナンバー>なんか、大橋純子さんの楽曲でも、以前は知る人ぞ知る存在だったでしょ。それがここ2〜3年で、シティポップ界隈では誰でも知っている曲になった。僕は前から大好きだったし、カヴァー企画が持ち上がった時に、すぐ浮かんだ曲のひとつでした。金澤さん企画のLIVE Light Mellowでもご一緒しましたから、トリビュート的意味合いも込めて、ですね(23年11月没)。このコーラスの追っ掛けパートも、いろいろ工夫しました。カヴァーといって、ある程度オリジナルのテイストを残さないといけない、と思うんです。選んだ理由がそこにあるワケだし、それを完全に削ってしまったら、ただのチャレンジになってしまう。その曲の何が良くてカヴァーするのか、それが分からなくなってしまいます。考え過ぎ、イジり過ぎのカヴァーって、星の数ほどあるじゃないですか。そのままじゃいけないけど、素直なリメイクに自分らしさを交え、オリジナルへのリスペクトを込める。そこもまたバランス感覚が大切なんだと思います。
最近の若手アーティストによるシティポップ・カヴァー、とりわけ新人の場合は、歌は上手くてもキャラクターは薄クチで、どうも有名曲の魅力に頼りがちの面がある。
- “この子、この曲に興味ないな”って感じてしまうこともありますね。シティポップが流行っているから歌う。曲が好きで歌うんじゃなく、持って来られたから歌っている。悲しい曲なのに笑顔で歌っちゃったりね。そういうカヴァー集には絶対したくなかった。
- <雨のステイション>は、ピアノをバックにジックリ歌い込んでますね。名曲多数のユーミンの中でコレ、というのが興味深かった。
- 前にカヴァーしたことがありました。サウンドが派手な名曲はたくさんありますけど、ユーミンなら、僕はこういうシットリ系が好きなんです。歌入れの時はホントに全編ピアノ一本で、リズムは後から足しました。そして最後にフリューゲル・ホーンが来て、美味しいところを全部持っていっちゃう。歌い手としては、“オイオイ、そりゃないだろ〜”って感じですけど(笑)
- 他に歌ってみたかったけど入らなかった、という曲なんてありますか?
- 堺正章さんの<街の灯り>。あとは<さよならの向こう側>(山口百恵)とかWINK<愛が止まらない>とか。女性モノで固めようとしてた時に候補に上がった曲がいくつかありますね。
- ヘェ〜、WINKなんだ!
- 西城秀樹さんがカヴァーして歌ってたんですよ。化粧品のCMで、絵面もカッコ良くて。アレが好きだったんです。原曲は洋楽で カイリー・ミノーグでしたけどね。
- タイトルの『憧憬都市』は何処から?
- これはスタッフみんなで悩みました。最初は英語案も出ていたんですが、良いのが浮かばず、じゃあ四文字熟語風の造語で行こうと。それで<流星都市>をカヴァーしていたので、その線で樹クンが見つけてきたのが“憧憬”でした。
- Jさんのイラストはタイトルが決まってから?
- <流星都市>をカヴァーする、そしてそれをリード・トラックに、という流れからです。それでシティ=都市が、ひとつのキーワードになりました。
先行配信された<WINDY SUMMER>や<テレフォン・ナンバー>は、国内に限らず、早くも海外で話題になっている。ハヤリに乗ったように見せ掛けて、実はその他大勢とのスタンスの違いをアピールする戦略か。でもそれは、多くのシティポップ・カヴァーが溢れかえっていて、いろいろ比較しやすいこのタイミングだからこそ。軽い気持ちで楽しめるが、奥へ行けば行くほど隠された魅力が湧き出してくる。
- 少しずつ撮(録)って出し、撮って出し、の積み重ねからフル・アルバムに仕上げていくプロセスだったにしては、よくまとまったと思います。苦労はありましたが、曲順はコレしかない!とすぐ決まりましたし、結果としてとても満足の行くモノになりました。
ジャンクのヴォ―カル、個性や存在感が一丸となって押し出され、サブスクリプションに対応しつつも、アルバムとしてのトータルな作品力が極めて高い。まさしく理想的なシティポップ・カヴァー集が完成した。
《カヴァー曲紹介》
※カッコ内はオリジナル・アーティスト
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WINDY SUMMER (杏里)
<Cat’s Eye><悲しみが止まらない>の2大ヒット曲を収めた杏里の83年作人気盤『TIMELY!!』から。角松敏生が作編曲し、アルバムのプロデュースまで担当。前後作『Bi・KI・Ni』『COOOL』と合わせ、角松3部作と呼ばれている。78年のデビュー・ヒット<オリビアを聴きながら>以降、伸び悩んでいる感もあった彼女を“夏女”に仕立てたのは、他ならぬ角松の手腕だった。
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テレフォン・ナンバー (大橋純子)
<たそがれマイラヴ>や<シルエット・ロマンス>のヒットで知られる大橋純子、81年のアルバム『TEA FOR TWO』収録曲。強力なホーン・セクションと昂揚するコーラス・ワークが印象的で、昨今のシティポップ・ブームに乗って再評価、2021年になって7インチ・アナログでシングル・カットされた。カヴァーも急増中の現在進行形人気曲。
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ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER(杉山清貴&オメガトライブ)
83年にデビューした杉山清貴&オメガトライブ5枚目のシングル曲で、85年3月リリース。航空会社のCMソングとして各チャート上位にランクされ、彼ら最大のセールスを記録した。彼らのヒットを数多く手掛ける作詞:康珍化/作編曲:林哲司のコンビは、CM関係者から楽曲モチーフを渡され、1日で曲を書き上げたという。バンドの4作目『ANOTHER SUMMER』に収録。
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流星都市 (Original Love)
最高傑作との呼び声も高い95年の通算5作目『RAINBOW RACE』の人気曲。88年にインディー・デビュー、91年にメジャー・レーベルへ移ったOriginal Loveは、当時いわゆる渋谷系の代表グループに成長していた。でも実は、それがバンド体制で制作した最後のアルバム。以降は田島貴男のワンマン・プロジェクトとして活動を続けている。
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夏の終りのハーモニー (井上陽水 & 安全地帯)
86年8月に神宮球場で開催された井上陽水と安全地帯のジョイント・ライヴで初披露され、翌月発表された共演シングル。玉置浩二率いる安全地帯は北海道旭川で結成され、81年から陽水のバック・バンドを担当、翌年正式にデビュー。85年までに<ワインレッドの心><恋の予感><悲しみにさよなら>などを大ヒットさせた。88年以降は断続的な活動に移り、玉置はソロでも絶対的評価を得ている。
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真夜中のドア~stay with me (松原みき)
79年11月発売の松原みきデビュー・シングル。翌年1月に出た1stアルバム『POCKET PARK』にも、別ヴァージョンで収録された。90年代初頭から頻繁にカヴァーされていたが、実は80年当時オリコン・チャート28位止まり。しかしTVなどメディア露出が多く、竹内まりや<セプテンバー>と共に作曲家:林哲司の出世曲になった。2020年インドネシアのYouTuber:Rainychによるカヴァーがバズり、世界的シティポップ・ブームの火付け役に。
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真昼 (benzo)
98年にデビューした北海道出身のポップ・ロック・バンド、benzo。この曲を収めた1stアルバム『benzoの場合』はシュガー・ベイブの再来と注目されるも、わずかにアルバム2枚で解散。中核メンバーの平泉光司(vo,g)や伊賀航 (b)らはその後も各方面で活躍を続け、断続的にbenzoを再結成している。ユニークなバンド名は、地元の帯広を開拓した依田勉三に因んで。
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黄昏のBAY CITY (八神純子)
83年末の7作目『FULL MOON』からの先行シングル。八神は74年からヤマハ音楽振興会主催『ポピュラーソングコンテスト』(通称ポプコン)の上位入賞常連で、78年に<思い出は美しすぎて>で本格デビュー。<みずいろの雨>の大ヒットで、ニューミュージック・シーンを先導する存在になった。80年代半ば以降、米国に拠点を移していたが、東日本大震災を機に日本での活動を再開。この曲は昨今のシティポップ再評価で人気急上昇中。
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雨のステイション (荒井由実)
ユーミンこと松任谷由実が、まだ旧姓:荒井由実を名乗っていた時代の名作『COBALT HOUR』(75年) に収めたミディアム・バラード。彼女と縁の深いハイ・ファイ・セットも、77年作『LOVE COLLECTION』でカヴァーしている。歌詞の舞台は、ユーミンの実家がある八王子に程近い、JR青梅線の西立川駅。そこには記念碑が建てられ、06年には駅の発車メロディにも採用されたそうだ。
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夢の途中 (来生たかお)
薬師丸ひろ子の主演映画主題歌にして彼女のデビュー曲<セーラー服と機関銃>としても知られる81年のヒット。元々は来生の歌で映画に提供される予定だったが、薬師丸が歌うことになり、同時ヒットを記録した。来生は76年にソロ・デビュー。姉えつことの作曲チームとして、中森明菜<スローモーション><セカンド・ラブ>、大橋純子<シルエット・ロマンス>など、多くのヒット曲を生んでいる。来生の通算7作目『夢の途中』にも収録。
金澤寿和/Toshikazu Kanazawa
AOR、シティ・ポップを中心に、ロック、ソウル、ジャズ・フュージョンなど、70~80年代の都会派サウンドに愛情を注ぐ音楽ライター。CD解説や音楽専門誌への執筆の傍ら、邦・洋ライトメロウ・シリーズほか再発シリーズの監修、コンピレーションCDの選曲などを多数手掛けている。現在、ライフワークである洋楽AORのディスクガイド『AOR Light Mellow Premium』シリーズが進行中。ほぼ毎日更新のブログは、
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